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○月Γ日 イリーナ

レノ先輩がいない。ツォンさんに聞いたら、
「あいつは今、私が付きっ切りで色々と……フヒヒ!」
って言われた。……───な、なんてことなの!!?
ずるい。ツォンさんと2人で、私に言えないような事をしてるんだ。
悔し紛れにパソコンを開いていたら、レノ先輩の日記を見つけてしまった。(>>これ

………………。
ふ〜ん、なるほどね。
………。

なに幸せそうな事やってるのよおおおおおおおお
「レノとツォンを閉じ込めてみた」とでも!?パクリよ、二番煎じよっ!!
こんな辛そうな書き方して嫌味なわけ!?レノ先輩ってやっぱり性格悪いわっ!!
許せない。ツォンさんと2人っきりの空間に、これ以上先輩を置いておけない。

─────絶対に、レノ先輩を助け出す。

じゃなくて、絶対に、ふたりの仲を引き離してみせるわ!
タークスの意地と心意気、見せてやるんだから!!

○月Γ日 レノ

今日は何故かツォンさんが朝からいなかった。
チャンスだ、いまのうちに逃げだしてやる!

そう意気込んであたりを見回す、すると部屋の隅に黒い布を被った物体を見つけた。
怪しく思い、ロッドで恐る恐る布をめくる。
・・中から出てきたのは、なんてことはないクマのぬいぐるみだった。
安心したような、がっかりしたような気分でぬいぐるみを手に取った。
その瞬間、頭ん中をなにかがよぎった。それが何かは分からなかった、でもなんだかとても懐かしい気分だ・・・。
そいつを見てたら、必死こいて抜けだそうとしてんのが恰好悪く思えてきた。

とりあえず気持ちを落ち着けようと何となく詩でも書いてみた・・・

けっこうイイ感じに出来たぞ、と。

あさ向かえ、サンサ
ン差し込む光あり。か
げ伸びて、電磁
ロッドの道しるべ

ヤバイ、また一つ自分の才能を見つけてしまったぞ、と。
自分の恐ろしさに悪寒と微熱すら覚えた。

○月Γ日 ツォン

今日は朝から出かけていた。
今の中途半端な状態のレノを1人にするのは多少不安が残るが、
万が一の時のために、クマエルちゃんを残しておいたので、平気だろう。

目的地は会社。68階、宝条博士の研究室である。
博士に頼んで、あるものを作ってもらう必要があるのだ。博士は、
「なぜ私が君なんかの頼みを聞かねばならんのだね!?クァックァックァッ!」
と高慢に言った。ありえないほど奇怪な笑い方に眉を顰めつつ、私が
「上役御用達レストランで、魚のスズキを人の名前と間違えたそうですね(>>これ)」と言うと、
「クァックァックァ……───だって……ホラ……それはその………モジモジ………」
と答えたので、正直ちょっと萌えた。

とにかく、博士にはとある薬を作ってもらった。
出来上がった薬、その名も 『 ア ン ゲ ロ イ ド A 錠 』 ! !

これを飲んだ者は、一時的にアンゲロリーナ様の虜になるという素晴らしい薬。
だが、一時的、というのが問題だ。1錠につき約3時間ほどしか効果はない。
効果が切れたら元に戻ってしまうのが難点だ。これは改良の余地があるな。

これを作ってもらったのには理由がある。
レノの洗脳……ゲフンゲフン!!いや、説得はいまだ途中だ。
だが奴もタークスの一員、社会人だ。ずっとあの部屋に閉じ込めておくわけにはいかない。
周りの人々に不審に思われては、任務の遂行は難しいからな。

明日から、朝、昼、晩とこれをレノに飲ませ、そして夜はあの部屋へ連れて帰るという生活だ。
フヒヒヒヒ!レノはどのような改心を見せてくれるのだろうか。今から楽しみでならない。
もう笑いが止まらない。フヒイッヒヒヒヒヒヒギッヒヒヒヒゲアヒヒヒhゲホッ、ゴホォッ!!!苦しい!!
笑いすぎてリンパが痛い!!フヒヒgヘオイアghンゲロ

○月ρ日 イリーナ

……こんな時間まで、私ったら何をしてるのかしら。
そうよ。ツォンさんとレノ先輩がふ、ふ、ふ……想像したくも無いけれど
ふたりっきりで暮らしているらしい部屋に、殴りこみに行くのよ。
そのために釘バットを装備して、準備万端で日曜の朝から出かけたんだから。

……でも私は、肝心な事を忘れていた。
場所がわからない……。ツォンさんの自宅(布を被っている)じゃないようだし、
ミッドガルの郊外にはマンションなんて星の数ほどある。到底、探しきれない。
っていうか、私はミッドガルにいたはずなんだけれど、ここはどこなの?
私は、自分が軽い方向音痴だった事を忘れていた。

───鬱蒼とした暗い森の中を徘徊して、何時間経っただろう。
持ってきたカロリーメイトを齧りながら、今、この手記を書いている。
もし、このまま帰り道がわからなかったら……誰にも見つけて貰えなかったら……
どうすればいいの?不安で目が潤んできた。ダメ、泣いちゃダメよイリーナ。
タークスの意地と心意気を見せてやるんでしょう。

そう、私にはアンゲロリーナ様がついてる。
きっと、誰か助けにきてくれるはずだわ……。
助かったら、お祈りの時間を毎晩2時間延長しようと思う。
今から楽しみでならな……クスッ、私ったらツォンさんみたい。
────。
……ツォンさん……ルード先輩……レノ……せんぱい………
(眠ってしまったらしく、涙で滲んだ後とともに、その続きは書かれていない)

○月ρ日 ハイデッカー

キャハハの女狐がまた俺を小馬鹿にしやがった。女でなきゃとっくに殴ってる。
変態パルマーもムカつく。リーブの真面目野郎もムカつく。
ボンボンの若社長がなによりムカつく。どいつもこいつもムカつく野郎ばっかだ。
イライラする。イリーナの奴でもいびってやろう。
と思ったのに、オフィスに誰もいやがらねえ。また腹が立つ。
大体まだ昼だってのに誰もいないわけねえだろと部内を探す。
そのうち、やっとひとり見つけたが、


「・・・・」
「・・・どうも」

なぜかパンツいっちょのルードがトイレにいた。



全員クビにしてやる。

○月ф日 ルーファウス

どうも最近体の調子がおかしい。早めに寝ても疲労感が取れない。
時折咳き込むこともある。風邪をこじらせてしまったのだろうか…。
昨日の定例会議の際に咳き込んだ私を気遣って、
ツォンが風邪に効くというビタミン剤をくれた。気の利く奴だ。
折角だから寝る前に飲もうと思っていたが、会社の自室に忘れてきてしまった。
明日の午前中にでも掛かり付けの医者に診てもらい、出勤は遅れて行こう。
やはり体が資本だからな。

○月Г日 ルード

フォォーー…………。レノがいない…。
せっかく折れたロッドが直って出勤したというのに…
これではペアルックを楽しめないではないか!
主任に聞いても知らないの一点張りだし、いったいどこへ行ってしまったのだ、レノ…。
……いや、実はもう見当はついている。主任に聞いたときにイリーナが、
ビクッ、となっていたのをオレのグラサンは見逃してはいない!
きっとあいつが、レノを監禁して我が物にせんとしているに違いない。
ゆ…許せん…。絶対に許さんぞ糞アマが!じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!
……少し興奮してしまった。いかんな、オレらしくもない。
ということで、隙を見てヤツの服に付けたGPSを辿り、レノの居場所まで向かうとしよう。
ふふ、それにしてもあんな小さなものを付けるだけで居場所がわかるとは、
俺の知らないうちに世の中便利になったものだ。
さて、それではGPSに取り付けた糸を辿るとするか!
待ってろよ相棒!

○月HG日 ルード

 イリーナ追跡からはや2日。俺は、糸でぐるぐる巻き状態のツォンさんを見つけた。
あいつはどうやらツォンさんの周囲をぐるぐる未練たらしく回ったらしい。
レノを拉致監禁するなどという、好色げな行為におよんでおきながら、上司にも手を出していたのかあの女は!!!フォー!!
ますますもってイリーナ許すまじの精神で、俺は助けを求めるツォンさんを無視して追跡を続けた。
 ツォンさんは、なにやら『ルード、この糸をほどいてくれ!レノが私の帰りを待っているのだ!』
などと言っていたが、あいにく俺は忙しい。レノを救出せねばならんのだからな!

 ほふく前進で進んでいくと、ジャングルらしき森にたどりついた。
不気味な様相をしていたが、俺はかまわず進んだ。だってレノのためなんですものセイセイッ!!
鬱蒼と生い茂る草をかきわけていくと、…いた!イリーナだ!この女狐!!キィィィ!フォォォォ!!
しかし、どうも様子がおかしかった。いや、イリーナの格好からしておかしい。
ヤツはいつものタークスの制服ではなく、葉っぱで作ったこしみのをまとい、やしの木の実をふたつに割ったブラをして、
雄雄しく『あんげ〜ろ〜〜〜!!!』と言いながらターザンよろしくツタにつかまって木々の間を飛び交っていたのだ。
 うむ。どうやら文明生活から離れたため、野生化してしまったらしいな。

俺は、あまりのイリーナのたくましさに、しばしレノの事を忘れ、写メをとりまくった。

○月α日   ツォン

……あれからどのくらいの時間が経ったのだろうか…。
なにか金色をした獣のようなものが私にぶつかって来たのまでは覚えている。
それから…意識が遠くなっていって……、目覚めたらなぜか糸でグルグル巻きにされていた。
まずいな…。早く戻らなければ…。もうすぐレノが目覚めてしまう。
まだ洗の…ゲフンゲフンッ、もとい教育は完全には終わっていない。
あと少しだというのに…、このままでは目覚めたレノは逃げ出してしまうだろう。
なんとかしなければ…!!
一刻も早くアンゲロリーナ様の加護を受けて、レノに真の幸せを知ってもらわなければ!
そう!これはレノのためなのだ!大切な部下のためにも私には戻る義務がある!
とにかくこの糸をなんとかしなければ…!ぬ…く…くく…くそ……だ…!
くっ、だめだ、もがくほど食い込んでく……くそ…あ…あぁ…ぁん…あぁぁ…アンゲロォォォォォ!!
………ふぅ。軽くイッてしまった。また一つ、新しい発見だ。
ああ…しかし今はそんなことを楽しんでいる暇はない。早くレノの元へ戻らなければ…。
……ん?あの日焼けしたサンプラザ中野のような風体の男は…ルードではないか!!

何故こんなところに!?その手に持っている大量の糸はなんだ!?お前がこれ巻いたのか!?…と、
聞きたいことは山ほどあるが、とにかく今はありがたい。すまないがこれをちょっとほどいてくれ。
お、おい!聞いているのか!?このままではレノが…おい!ちょっと!!
………!! こ、恐い…
なんという怒りに満ちた目をしているのだ…。長い間上司をしているが、こんなルードは初めて見る…。
こちらをチラリと見ただけで、ルードは去っていった。
ふぅ…。殺されるかと思った…。びっくりして思わずチビってしまった。大を。

ウンコを漏らしてテンションが下がったのか、なんだかもう、どうでもよくなってきた。
もう疲れたよ…アンゲラッシュ…。
薄れゆく意識の中、どこか遠くから野太い女性の声で
「我が名はラブエンジェル!!あんげろぉぉぉん!!!」
という声が聞こえたような気がした。あれは気のせいだったのだろうか…。

あぁ、アンゲロリーナ様よ。永遠に……………

β月α日 ツォン

私は気がつけば見知らぬ部屋にいた。
そこは一面真っ白の奇妙な部屋だ。
窓らしき窓もない。

私は辺りを見回した。
そこには黄色の物体があった。
あ、あれは!!

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