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○月Ζ日 レノ

赤いカツラ買ってきた。
もちろん、俺と同じ髪型のヤツだ。
これをルードに被ってもらって、100ヒットの身代わりにするつもりだった。

だが、ここで大いなる誤算が起きた。

俺がヅラを購入している所を、なぜかツォンさん本人に見られた。
「レノ……お前、派手な頭してると思ったら、それ、ハゲのカモフラージュだったのか」
って俺を見つめてた。冷静な顔してたが、背後に「プゲラッチョwww」って文字が見えそうだった。
ツォンさんの野郎、いくら違うって言っても信じてくれねぇ。
証拠に髪の毛引っ張っていいからって言っても、可哀相だからって手も出しやがらねぇ。
「お前も、スキンヘッドに誇りを持つルードや、デコ丸出しの宝条博士のように堂々としたらどうだ?」
だと?
ふざけんな。俺は地毛だぞ、と。

「大丈夫だ。アンゲロリーナ様に誓ってバラしたりしないから。フヒヒヒヒ!!」
ってツォンさんは言い捨てて去っていった。

明日会社に行くのが果てしなく怖い。


……っていうか、ツォンさんもどうしてヅラショップにいたんだろうか。
考え出すとマジでハゲそうなのでやめておく。
今夜は現実逃避に、飲んで帰る事に決めた。

 ○月Ψ日 イリーナ

レノ先輩ったら、何か嫌な事でもあったのかしら。
泥酔して、なぜか自宅に帰らずにオフィスに来たレノ先輩は、
そのまま力尽きたのか、廊下で寝てしまった。
休日出勤で残業までしている私が残ってたからいいようなものの、
まったくもう、本当にいい加減なんだから。

それより、重くてとても先輩のデスクまで運べない。
「這(は)って行ってください!」と何度も声をかけたが、
そのたびに先輩は「ハッ!ハッ!ハッ!」と答えていた。


きっと、よほど嫌な事があったのね。

○月κ日 ルードゲイ

セイセイセイッ!!!!!!フォォォフォォーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!!!!!
……いけない、つい興奮してしまったようだ。

レノからプレゼントを貰った。
オレが奴にアイテム等をあげる事はあっても、レノからは始めてかもしれない。
昼休みに体育館裏、ではなくシャワールーム裏に呼び出され、何かと思ったら
レノはとても恥ずかしそうに、オレに……このオレにプレゼントフゥーーーーーーーー!!!!!!(カクカク)
……いけない。この間腰痛で入院したばかりだというのに、気をつけねば。

レノからのプレゼントは、カツラだった。
レノと同じ、赤毛の、つまりお揃いの、ペ、ペ、ペアルッkフォォォォォーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!(カクカク)
……い、いかん。興奮しすぎて鉛筆をへし折ってしまった。これで13本目だ。

「明日から毎日かぶってこいよ、と」
もちろんだ。言われるまでもない。スキンヘッドに誇りはあるが、それはまた別問題だ。
「あ。それと、コレ……あんたに預けとく。絶対肌身離さず持っててくれよ、と」
そう言ってレノは、電磁ロッドをオレに手渡した。……なぜだ?
「……よし、と。コレで、武器を持ってるのはあんた。俺は武器を持ってない事になるよな?な?な?」
まあ、確かにそうだが。いったい何事だ?
………しかし。これはつまり。

『常に身に着けていた大切な武器をオレに預ける=相棒の信頼の証』

フォッ、フォッ、フォォォォォフォーーーーーーーーーーーーーーーッッフッ、フッフッ、フッッ!!!!!(カクカクカクカク)

興奮しすぎて、レノは逃げるように去っていったが、よしとしよう。
明日から幸福な日々が待っていそうな気がする。

○月仝日 ツォン

少々困ったことが起きた。
ラブ・エンジェルさん、もといアンゲロリーナ様の使者様からのキリ番リクのことだ。
私は当初「赤髪:同じ会社員:何かを武器としてもっている」
という条件からレノを連想していた。
しかし予期せぬ事が起きた。
今日ルードが赤髪のカツラに電磁ロッド装備という出で立ちで出社してきたのだ。
対してレノは「脱色したんですよ、と。イメチェンイメチェンww」
とか言って桃色の髪で出社してきた。
しかも、いつも手放さない電磁ロッドを無くしたらしい。
どうやら任務の最中に敵に壊されたようだ。
これでは条件に合う人物がルードになってしまう。
そこで私は、ある決意をした。
明日もルードとレノが今日と同じ出で立ちで出社してきたら
ルードの方を食事に連れて行こうと思う。
せっかくレノを更にアンゲロリーナ様の教えに浸そうと思い
アンゲロリーナ様信者専用の高級レストランを予約したのに・・・
まぁ良い。
先にルードを信者に引き込むというのも悪くない。
さぁ来るなら来やがれ。
どっちを連れて行く結果になるか今から楽しみでならない。
フヒヒヒヒヒヒ!

○月仝日 イリーナ

ちょwwwww
キリ番を踏んだ嬉しさいっぱいでウキウキで出社すると、何故かルード先輩が赤い髪&ロッド装備で出勤のルード先輩に遭遇。
そして、その傍らを、髪が桃色、という乙女ちっくないでたちのレノ先輩が横を通り過ぎていった。
何!? その華麗な変身は!!
予想していなかった二人の変身に焦って廊下を歩いていると、思案顔のツォンさんとすれ違った。
―――どうしよう。心がちくりと痛んだ。
真面目なツォンさんの事だから、きっと私の占い通りの人間を探して心労しているんだ…どうするのラブ・エンジェル。

私は意を決して、昼休みに購買部&洋服屋へと走った。
ルード先輩を見て、私は勇気を貰った。
どうせなら、自分が行けばいいんだ。
私は二人で食事に行くのが怖くて、どこかで逃げていたんだ。そんな自分に『サヨナラ』を告げる。

洗って落とせるスプレーで金髪は赤く染めた。
髪に合わせてメイクや服も少し変えた。赤い唇。
短めに広がったチェックのスカート。ベルトだらけの黒いブーツ、破れたスーツには安全ピンがいっぱい。
手にはいつもの短銃と、クマのぬいぐるみ。
ツォンさんに選んで貰う為にしてみた格好だ。
でも何だか変な気分。
こんな格好、社長に見られたらクビにされるかもしれないのに……魂が疼き、何かを、叫んでる。
そう、反抗する事―――― それこそがロックなんだ。

「弱い自分にサヨナラ!! 明日を求めて彷徨うー!! 魂のlove・love・love・love・love・Angeluuuu...!!!!」

給湯室でシャウトしていると、いつの間にか背後に立っていたツォンさんに見られた。
ツォンさんは何も言わずに私の姿を下から上まで見て、眉間にシワを寄せると、そのまま立ち去ってしまった。

なぜだろう、涙が止まらないわラブ・エンジェル。

 11月23日 ツォン

今日、会社についたら人の気配が全然無かった。
レノもいない。イリーナもいない。ルードもいない。社長もいない。
なんだというのだ。せっかく、高級レストランの予約をしたというのに。

1人でデスクに向かって、仕事をしていた。
静かな部屋に、キーボードの音だけが響いている。
いつも騒々しいと怒っている私だが、その音が無いと思うと、少し──……。
………フッ、おかしいな。タークス主任とした事が。

定時まで仕事をした。
誰もこない。
今日はこのあと、食事をする予定だった。
誰もいない。
無言で帰り支度をする。
泣いてなどいない。

エレベーターの中で、リーブ部長に会った。
「お、祝日まで忙しいですなー。って、人の事言えませんけどね」
リーブ部長はそう言って笑った。いったいなんの話だ?
私が理解できないという顔をしていると、部長は続けた。
「今日、勤労感謝の日で休みですよ」
「べ!!」

心に衝撃が走り、私はすごい勢いでガラスを割って外に飛び出した。
私は、避けられていたのではなかった!部下に避けられてはいなかったのだ!!!
全身がカーッと熱くなってきて、私はスーツをどんどん脱ぎながら走った。
フヒ!!フヒヒヒヒ!!レストランの予約は延期だ!!フヒッヒヒヒヒヒヒ!!

ところで、祝日にわざわざ有給申請したルードを思うと、笑いが止まらない。
フヒヒヒヒヒ!!なんかもうすいません!!

○月π日 ルード

しまった。
レノに借りていた電磁ロッドを尻に挟んだまま寝てたら、
今朝起き抜けに力んでしまいぽっきりと折れてしまった。
金属製品というのは案外脆いものだ。などといってる場合ではない。
急いで近所の電気屋に修理に行ったが、今日一日はかかるとのこと。
これでは私を信頼してロッドを預けてくれたレノにあわせる顔がないので
今日は会社を休むことにした。幸い有給休暇の方もたまってる。
というわけで一日トレーニングに励むことにした。もちろん全裸だ。
途中何度か携帯が鳴っていたような気がしたが、扱いがよく分からないので全部無視した。
なかなか手応えのある一日だった。あとで電気屋に行って、今日は寝ておこう。
おやすみレノ。

○月φ日 イリーナ

久々にちょっと反省した……。
とりあえず昨日からの経緯を記してみる。

こないだのラブカキコからレノ先輩がやたらそわそわしてたので気にしてたら、
やっぱり感づいていたらしくある日いきなり髪を桃色に染めてきやがった。
おまけにルード先輩が赤髪電磁ロッド所持の、普段のレノ先輩スタイルになってた。
なんて分かりやすい人だろう、ルード先輩を生け贄に差し出すつもりなのだ。
他人を犠牲にして、あまつさえそれを笑おうだなんて、なんて汚い!
このままいけば純粋なツォンさんはレノ先輩の目論みに引っかかってしまうかも…。
でもそうは問屋がアンゲロよ!
そして昨日、私は頃合いを見てレノ先輩のデスクに近づいていった。
おまけに今日はあのルード先輩が珍しく欠勤。アンゲロリーナ様も助けてくださってるんだわ。
なんだか血相を変えて携帯と奮闘してる先輩に話しかける私。
「せ・ん・ぱ・い」
「ルードルードオオオオオ出ろおおおおいいい!ルー……お、イ…イリーナ?
 なななんか用か、と。俺は今忙しいんだぞ、と」
「あのお……この間はぁ、私のミスでご迷惑かけちゃいまして……」
身体をクネクネさせて全力で甘ったるい声を出す私。
我ながら寒気がするほどイタいわ……でもここが我慢のしどころよラブエンジェル!
「あ…あぁ、そんなもんもう気にすんなよ、と」
「でもそれじゃ私の気が済みません!ですから……」

と、ここで用意していたアレを取り出す。
わざわざ胸から取り出してやると、案の定先輩は喉を鳴らした。馬鹿。死ね。
「はい!これおわびのプレゼントです!」
ここでひときわ大きな声を出す。ツォンさんの注意を引かないといけない。
さっきトイレで30回ぐらい顔を引っぱたいてきたから私はいい具合に赤くなってる。
仕上げは完璧。レノ先輩は驚いていたが、しばらくするとだらしなくニヤニヤしだした。
「そ、そうか。ま、まあなんだ、お前も気が利く所あるんだな、と。へへへ…」
キモい。もう最悪。
キモさ全開のまま先輩は包みを開けてる。そのにやけ顔もいまのうちよ。
あぁツォンさん、やれやれって顔してるわ。でも誤解しないで!これは今だけ!
あとちょっとだけのお芝居なの!私はツォンさんだけのラブエンジェルなんだから!
さあー、早く開けろ、開けろ開けろ開けろ、開けるのよ先輩!

「………」

……やった。かんッペきに決まったわ。ああ、もう見て先輩のこの顔。
「先輩、お気に召していただけましたあ?」
「………」
「電磁ロッド、なくしたって言ってたから、新品の買ってきたんですよお!」
「………」
「もお、こんなのどこにも売ってないから苦労しましたよ!」
すごいわ、こんな呆然とした人間の顔はじめてみたわ!笑いが止まんない!
オホホホホホホホ、いいわその顔!最高よ!アハハハハアンゲロアンゲロ!
小賢しい細工なんか企んだって、ラブエンジェルは見逃さないのよ、オホホホホ!
キャハハハハヒヒヒヒハハハッハハハハフヒヒヒヒヒ!!

…ちょっと興奮しちゃった。
ま、そのあとなんとかして赤ペンキでも髪にぶっかけてやろうかと思ってたけど、
それをやるまでもなく、先輩は帰る前にばっちしツォンさんに捕まった。
オフィスを出る直前のすがるような目つきが印象的でした。まる。


……というのが昨日までの展開だったんだけど。
今日になってちょっと状況が変わった。
今朝出社すると、朝一にも関わらず先輩がデスクに座っていた。
私はさっそく昨日のことを聞いてやろうと思って話しかけた。すると、
「あんげろ」
「……?」
先輩は魔晄中毒者のような目つきで熊の人形を抱きながら放心としていた。
何を話しかけてもうつろな声で「あんげろ」しか言わない。
私はなんだか気味悪くなってデスクを離れた。
でも怖くなっというよりも、
本当は先輩の頬にたくさんの涙が流れたような痕を見つけてしまったから…。


何があったかはツォンさんに聞くわけにもいかない。
サイトが更新されれば分かるだろう………たぶん。

○がつπにち れの

きょうはつぉんさんとれすとらんにいったのです。
れすとらんはとってもぴかぴかしてておおきくてあんげろでした。
うぇいたーのひともおきゃくさんもおりょうりもみんなあんげろでした。
なかでもつぉんさんのほくろがとびっきりのあんげろでした。
それからつぉんさんがきょうからきみもあんげろなんだよといってくれました。
ぼくはうれしくてあんげろといいました。
まわりのおきゃくさんもいっしょにあんげろといいました。
つぉんさんはうれしそうなかおをしてぼくにくまのおにんぎょうをくれました。
そのおにんぎょうのめがぴかーっとひかったかとおもったらぼくはいえにいました。
よくわからないけどとってもねむいのでもうねることにします。
もちろんにんぎょうのくまえるちゃんといっしょです。
めをつぶるとつぉんさんのだんごむしみたいなほくろがうかびました。
ぼくもいつかつぉんさんみたいなりっぱなあんげろになれるといいなあ。
おやすみなさいあんげろ。

○月∴日 レノ

先日、必死の努力もむなしくツォンさんに食事に連れてかれた・・・。
土壇場で
「すいません。俺ちょっと・・・残念ですけど帰っていいですかね?」
って言ったら
「フヒ!帰る?何故だ?フヒヒヒ!夜はこれからだぞレノォ!」
ってツォンさんが叫び始めた。そんで同時にホクロが光った。
すると、途端になんかどうでもよくなり付き合っててしまった。
何故だかは分からない。くそ俺のばか。
そこから先はよく覚えていないぞ、と。つーか、まずここ何処だ、と。目が覚めたらツォンさんと一緒に見覚えのない部屋にいた。
幸いパソコンがあったので今かいている。誰か助けてくれ。さっきから横でツォンさんが
「レノ!コーヒーが天使なのだよ!フヒヒ天使なんだよ!見てくれよ、いまこそ我がすべてのちからをぉぉ!だってそれはもうスパーキィン!」
とか言いながら何度も側転を繰り返してる・・。
頭が割れそうだ。頼む、誰でもいいから、来て助けてくれ、と・・・。

「アーウチィィ!小指がファイヤー!レノ、小指をぶつけたら火を吹いたぞ!それこそがアンゲロの導きなのさぁぁ!」

・・・一刻も早く助けてくれ、頼んだぞ、と・・・。

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