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∀月£日 手裏剣

「こっちです!急いでください!」

ミッドガルの人たちはもう、だいぶ非難させることが出来たはず。
いきなり黒スーツの2人が「避難しろ」って言い出したときには、住民の皆さんはそりゃもう驚いていたけど
必死に事情を説明すると、顔が青ざめて、必死に避難し始めてくれた。

ずっと声を張り上げているせいで、のどが焼けるように痛い。
でもそんなことで弱音を吐いていちゃいけない。
私と刀は比較的楽なはずよ。あっちは、もっと辛いんだから。

ロッドは、根拠の無い自信を炸裂させながら棒を振り回しているんでしょう。
二丁拳銃は、前髪の生え加減を気にしながら撃っているんでしょうね。
散弾銃は、スカーレットよろしく、高笑いしながら撃ちまくっているんじゃないかしら。
格闘♀は、男性陣より冷静に場を見ながら拳を繰り出していたりして。
短銃は、博士とワクチンを探していると聞いたわ。
きっと真面目に探そうとして、重役の誰かの意外な部分を見つけているかも。
格闘♂は、昼食にバナナを持参してきたこともあったから、こんなときでもバナナ食べていたりして……。
ううん、仮にもタークスよ。そんなこと……

「あるかもしれないわね……」
「え?」

思わず出てしまった独り言に、刀が振り向く。
彼の額にも汗の玉が浮き出ていて、息遣いも荒い。
そう、彼も辛いんだ。――頑張らなくちゃ。
私達も、ここで戦っている。

「何でもない。
 それより、あと避難していない人たちはどれくらい居るのかしら」
「もう大半は避難できているはずだよ。
 あとは1区画だけだ。急ごう!」

力強く頷いて、一緒に走り出した。
隣に居る刀――時々変な人(いえ、変態って言ったほうがしっくり来るかもしれないわね)なんて
思ったこともあったけど、今は一緒に戦う仲間。変態でも、仲間なんだから。

得体の知れないものが相手でも、例えそれが私を救ってくれた人でも、
私達はそれを倒さなくちゃいけない。これが、今回の任務。
決して失敗は許されない。
みんな、頑張ろう――!!


その時、ジュノンの方向から鋭い光が見えた。

「あれは――!」
「シスター・レイ……!」

ё月Л日 ロッド

「つまりアンゲロ化したツォンは、シスター・レイを受けたにも拘らず北の大空洞まで吹っ飛んだだけだったんだよ!!」
「「「「「な、なんだってー!?」」」」」
社長とレノ、格闘♀が何やら冷や汗を垂らしながら話していたから、何事かと思い話を聞いてみた。
……信じらんねぇ。アンゲロ・ツォンがあれを受けてもまだ生きているだって……!?

「驚愕。……でもあのツォンさんなら信じられなくも無いわね」
「それほどアンゲロが強力という事か……」
散弾銃と二丁拳銃も驚きを隠せてはいないようだ。
そりゃそうだよな。シスター・レイって言ったら神羅の最高武器なんだもんな。
俺だって信じらんねぇよ。

「嘘……北の……大空洞に……!?」
「…………しぶといな……」
イリーナとルードも、額に冷や汗が垂れている。
しかし、ルードはまず下半身を何かで隠せ。
みんな動揺を隠せずに視線が泳いでいるけど、あんたの下半身に視線が行った途端もっと目が泳いでるよ。

「社長、これからどうする?」
格闘♀のいつも通り冷静な声が、静かになった大聖堂に響く。
こんなときでも冷静だなんて、元傭兵だからか?いや、こいつの冷静さは尋常じゃねーよな。
「決まっているだろう。全員で北の大空洞に突撃だ」
社長がまっすぐ、タークスの1人1人を見渡す。
鋭い眼差しは、“社長”、だ。ルードを見るときに一瞬眉間に皺が寄ったのは気のせいじゃないと思う。

「もう1度言う。我々の敵は北の大空洞にいる。
 そいつを倒さなければ、ミッドガル――いや、世界に平和は訪れないだろう。
 しかし奴はそこらのウェポンより強力だろう。神羅カンパニー総務部調査課の全勢力を持って挑みたいと思う。
 よって、住民の避難がだいぶ完了していると思われる刀と手裏剣を応援に呼ぶ。
 短銃は引き続き、博士とワクチンを探してもらう予定だ」
「格闘♂はどうするんですか、と」
「ほっとけ」
言うなり、社長は手早く携帯で通話し始めた。相手はどうやら刀のようだ。
変態臭い声が、電話越しに微かに聞こえたからな。

「社長の命は我々タークスが守ってみせます」
ルードがサングラスを上げながら言った。
「いや……私も参戦しよう。
 私もアンゲロを倒す。全てを、取り戻すのだ」
凛とした表情の社長は、俺たちの精神的支えになる。
そう確信できるような表情だった。


「……よし、まずはここを出るぞ。刀と手裏剣とは、地上で落ち合う」
その場のタークスが力強く頷き、地上への道を歩みだした。
ふと、前を歩いている社長が、ルードに「何か穿け、そして尻のロッドを取れ」と言っているのが聞こえた。
ルードは最初は頑なに拒否していたが、「命令を聞かないと社員用ジムを使わせないぞ」と言われ、渋々だが渡されたパンツスーツを穿いていた。
尻のロッドも取ったようだ。
よかった。俺と同じ型のロッドを挟まれてて、何となく自分のロッドもしっかり握れなかったんだ。

ё月Л日 散弾銃

地上へのエレベーターに乗り込もうとしたとき、またも社長の携帯が鳴った。
この人、友達いなさそうなのに携帯はよく鳴るのね。さすが社長。

「私だ……ああ……そうだ…………なんだと!?」
通話相手が誰だか分からないけど、社長の顔は瞬く間に青ざめていった。
何事かと、エレベーターに乗ろうとしていた皆が社長に近付く。
我先にとエレベーターに乗り込んでいたロッドは、間に合わずに1人だけ先に地上に行ってしまったわ。ふ、無様ね。

「社長、今度はどうしました?」
イリーナが話しかける。通話終了ボタンを押した後も、社長の顔は青ざめていた。
「……アンゲロ・ツォンが飛ばされた北の大空洞…………
 そこに、アンゲロ・ジェノバとリユニオンしたセフィロスもいるようだ……!」
最悪……!災厄が同時に2体も!?しかもどちらもアンゲロ化しているですって!?
冗談じゃないわ!

「アンゲロ化した奴を同時に2体は無理だな……」
二丁拳銃が何事も無いように言うけど、あんた、動揺を隠せていないわよ。
瞬き繰り返しながら視線泳がせて、生えかけの前髪触っちゃって……うっ、こいつ、洗ってないイヌの臭いがする……。
それより、アンゲロ・ジェノバとリユニオンしたセフィロスですって!?
どれくらい強いかより、どんな姿になっているのかが気になるけど、どうしようもない展開だわ。

「社長……」
冷静を保っていた格闘♀も、さすがに顔を顰めている。
「…………」
社長も解決策を見出せていないようね。当たり前でしょうけど……。

「! おい!あいつは!?」
沈黙に包まれている空間を打ち破ったのはレノさんだった。
何か解決策でもあるというの?
「先輩、あいつって!?」
「クラウド達だ、と!あいつらならアンゲロ・ジェノバとリユニオンしたセフィロスを倒せるんじゃないか、と!」
……確かにそうね。不本意だけど、あいつらならアンゲロ・ジェノバとリユニオンしたセフィロスを倒せるかもしれない。
それは社長も同じ考えみたいで、社長もレノさんの意見に乗ることにしたみたい。

「では早速クラウド達に連絡を取らないといけないが……誰か連絡先が分かる者はいないか?」
「あっ、私、分かります!」
イリーナがスーツのポケットから1枚の紙を取り出した。どうやら何かのチラシみたい。
でもシンプルに“ストライフデリバリーサービス”という文字と電話番号しか書かれていないようね。
「お前、それどこで手に入れたんだ、と」
「以前格闘♂先輩がangello.co.jpっていう通販サイトで何か通販してたときに、届け先が会社だったんですよ。
 で、届けてくれたのがクラウドだったんです。その時に貰ったのが、このチラシですよ」

へぇ。あの子、今は荷物の運び屋やってるのね。
社長はチラシを受け取って、書かれている電話番号へ電話し始めた。
電話越しに聞こえてくる声は「興味ないね」「俺の仕事は荷物の配達だ」とか。
一向に話が進まない気配だったけど、社長が「セフィロスを倒してくれた暁には、
蜜蜂の館プラチナ会員証をプレゼントしよう」という条件を出したら少しの沈黙の後「わかった」って聞こえたわ。
二丁拳銃が、プラチナ会員証を欲しそうな目で社長を見ている。
……男って分からない。

「クラウドは仲間と一緒に来てくれるようだ。奴らとは北の大空洞で落ち合うことになった。」
携帯をポケットにしまいながら、社長は言った。
「これでアンゲロ・セフィロスの方は安心していいだろう。残すは――アンゲロ・ツォンだ……!」
再び、社長はタークスを見渡して、ゆっくりと頷いた。みんなも決意を固めたように、1度だけ頷いた。
私たちのラストバトルは、これから――!!


エレベーターに乗って神羅ビル1階に着くと、エレベーター横でロッドが1人、泣きそうな顔で体育座りをしていた。
さっきのことを説明するため、
「アンゲロ英雄まで出てきたわ。
 でも蜜蜂の館プラチナ会員証というご褒美のためにクラウド達が頑張ってくれるみたいよ。安心して」
と言ったら、
「プ、プラチナ会員証!?……う、うう 羨ま……あ、なんでもない!
 と、とにかく北の大空洞だよな!行こう!みんな!」
ってアンゲロ英雄ではなくプラチナ会員証の方に動揺していた。
やっぱり男ってわからない。

ё月Л日 ヴィンセント

ジリリリリリリリリリ、ジリリリリリリリリリ

「電話か」
着信音を「黒電話」にしているめったに鳴らない電話が鳴った。
相手は・・・誰だろうな。だが多分頼み事だ。

「ここを押せばいいのか」
「さっさと覚えてください」
シェルクから厳しい突っ込みが入る。
「・・・私だ」 
「クラウドだ」
「・・・・断る」
「・・・そういうと思っていた」
私は最近シェルクとともにシャルアを助ける方法を探していた。
それはクラウドも承知している。
「・・・ああ、ああ。そういうことだ。すまないな」
「行って来てもいいですよ。あなたがいても邪魔なだけですし」
言葉を突き刺す最近身長の伸び始めた彼女を横目に、クラウドに謝罪する。
何を頼もうとしていたのかは分からないが、
私が行かなくとも気のいい仲間たちはクラウドに協力するだろう。
「そっちのほうはどうなんだ?何か進展は」
「・・・特にない。シャルアの体は今のところ正常だが、このままではよくない」
「手が離せないみたいだな。わかった―――プツッ」

「行かないんですか。薄情者ですね」
「これは私の責任でもある。目を覚ますまでは私は此処を離れるつもりはない」
「しつこいんですけど」

私は此処を離れるつもりはない。たとえ愛していた人の心を有した女性が
私に対してものすごく冷たかったとしても。

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