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〆月Ω日 一般人F
しばらく惰眠を貪っていた。最近、あの夢を見なくなった・・・
あの、精霊との遭遇の夢だ。

かつて私は人ならざるものと出会ったのだ。
私はそれを精霊と呼ぶことにした。
あの身体能力、奇声、容姿と全て人間の域を超えていたからだ。

あの精霊は、足が三本あったような気がする。
いや、そもそも足なんてあっただろうか。夢にまで見るほどのインパクトだったが、
今では衝撃だけが残っていてその実体は薄れてしまったようだ。
幸いにもあのような経験はあれ以来ない。精霊は、今何処で何をしているのだろうか。
もしかしたら何処にもいないのかもしれない。私の作り出した幻のようなものだったのかもしれない。

もう、恐れることはないか・・・・
恐怖から家で窓を閉めきっていた私は、気付かなかった。その大きな存在に。

窓を開けた瞬間、それは目に飛び込んできた。
メテオ。かつて世界の終わりを告げようとしていたもの。ミッドガルに壊滅をもたらしたもの。

いや、それだけではない。メテオにシルエットが浮かんだ。

精霊だ。
精霊が人を抱えてジャンプしている。黒いスーツを着た人間が精霊の腕の中でぐったりとしている。

私は、気を失った。

$月*日 レノ
イリーナと社長の尾行を初めてから1週間・・・・・・
とうとう、ツォンさんが大聖堂にいることを突き止めた
ドジなイーリナは明らかに社長の視界に入っていたが
何故か見なかったふりをしてくれたのでホッとした
それにしてもイリーナ。あいつ本当にタークスなのか?
なまりやがって・・・。これが終わったら鍛え直したぞ、と

とにかく気をとりなおして
「覚悟はいいな!行くぞ、と」
疾風の如く走り出した・・・・・・のは俺だけで
足の遅いイリーナは何とか俺に追いつこうと必死
「せせせんぱい・・・は、は、は、はやい〜 ブヘっ!!」
そのうちに足がもれつ、最後には顔面から盛大にこけたので
見るに見かねた優しい俺はイリーナのネクタイを掴み光の早さで走った
途中「おはなばたけが・・・」と呟きながら白目をむいていたが
そんなの気にしてる暇はねぇ

大聖堂に到着すると、裸靴下でブリッジをしているツォンさんが視界に入った
きんもっっっ!久しぶりに見たからか?本当にきもい。。
・・・・・・いやいや、仮にも俺たちの主任だ。そんな事いっちゃいけねえ
「イリー・・・」
ネクタイが最大まで締まり首吊り状態だったイリーナは
白目をむき、泡をふき、痙攣までしてる。
これから決戦だってのに・・・だらしないぞ、と
「レノ、久しぶりだな。フヒヒヒ、私はとうとうアンゲロr」
「ツォン。俺からのメッセージ受け取ってくれたようだな
 俺は二代目アンゲロリーナ。アンゲロを広げる為にその名を受け継いだ
 ツォン。お前は十分にやってくれた。アンゲロは・・・」
「・・・・・せ、せんぱい。メッセージって、あのカキコは私が・・・・ぐへっ!」

三途の岸辺から戻ってきたイリーナが余計な事を言いそうだったのでもっかい首をしめる
ロッドを投げてエレベータのボタンを押し、開いたところで
イリーナのネクタイをもってぐるぐる回しそのまま勢いよくなげこむ
・・・・・悪いイリーナ。一緒に戦おうとしてくれたお前の心意気はありがたいが
正直今喋られると困るんだぞ、と
気を取り直してツォンさんを見ると、興奮しすぎて鼻血を出してる!!!
あわわわっっっっ!・・・・お、落ち着け俺。落ち着くんだぞ、と
冷静を装ってツォンさんに近づき、そのまま持っていたシャーペンをほくろに刺す
「ツ、ツォン!お、お前は十分にやってくれた。世界にアンゲロも広まった
 俺はもう十分に満足している。ありがとう。だからこれからは祈らなくてもいい
 祭りもいらない。タークスの為に、新羅の為に尽くしてあげなさい」
最初こそ声がうわずったが、まぁ良しとしよう。
ツォンさんは恍惚の表情で細かく震えているし。まぁ、成功・・・
「あああああんげろりーな様!!なななんと勿体ないお言葉!!!
 私は私は私は私は嬉しくて嬉しくて嬉しく・・・あぁぁぁ! ブハッ!」
「げっ!ツォンさん!?」
ブリッジをした体勢のままツォンさんは力つきた。鼻血もさらに大量に吹いた
暫く呆然としていたが、気を取り直して鼻血をふいてやった

昔から変態で気持ち悪くて、ちょっとそれは・・・ってところもあったけど
それでも俺たちの、タークスの、尊敬する先輩なんだぞ、と
だから早く戻ってきてくれ。お願いだから・・・・

$月*日 短銃♀

ツォンさんの再脱走からもう一週間になる。
あのあとロッドと散弾銃にツォンさん捜索を任せ、私は前社長のフォルダや隠しファイルを一から
探しなおしていた。
ツォンさん、あのゴッドガンダムの弱点はアンゲロか何かに違いない。ならばアンゲロに一番近い
存在だった前社長なら何かツォンさんの弱点が分かるのでは?と踏んだからだ。
しかし結局はアンゲロリーナ関連のファイルは私とリーブさんにあらかた調べられていて、弱点に
なりそうなものは無かった。
唯一あったとすれば、前社長が狂信的なノエル信者だったことだけだ。
その内容が書いてある日記の一文を引用してみると
魔光炉爆破の日
『今日、うちの壱番魔光炉が爆破された。
 やった連中はアバレンジャーだかボランチだかとかいう奴ららしい。ほんっとにむかつく。
 本当なら私自らアンゲロ粒子砲を放ちながら懲らしめたいとこだがそれも出来ない。
 というか見られたら私がアンゲロ信者と思われ、この座から下ろされる。
 というわけで今日はいとしいノエル様にアバランチだかの壊滅を願って机の上で逆立ちで
 お祈りした。
 ノエル様ノエル様、その華奢な体に秘められた力で神羅の敵をぶっ殺してください。』

7番街崩壊の日
『今日七番街を落としてみた。
 フ・・・フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!ついにやったついにやった!ついにブランチ戦士だかをつぶしたぞ!
 これで私の邪魔をするものがいなくなったフヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!
 私がノエル様に変わってその聖剣バスターソードで邪魔者をつぶしたのだ!!ノエル様万歳!ノエル様際最萌!
 今日からは何の不安も無く眠れるぞ!!フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!!(その下にノエルが剣を持ってフヒトを切り刻んでる絵が貼り付けられてる。)』

とまあ、ツォンさんにも負けず劣らず(いや、それ以上か?)のキモヲタっぷりを発揮していた。
他にも淡いタッチで書かれた綺麗なノエルのアニメ絵や、ノエル様ファンクラブのHTMLファイルなども見つかった。


しかし、そんなキモヲタが燦然と輝いたノエル専用フォルダの中に、ひとつだけ場違いなファイルが収められてた。
内容は去年版の神羅カンパニー製品のパンフだった。
「これ…やけにスペックがおかしい。」
それは現実離れした車のスペック(水冷2気筒1870馬力)や兵器のスペック(銃弾飛距離700mの拳銃)ばかりだった。
「もしかして…これって…暗号?」
昔アバランチの本拠地に似たような暗号を見たことがある、乱数式の暗号だ。

プレジデント神羅が残した遺産はツォンさんを増長させるものばかりだ。
絶対に、これらを処分してみせる。

$月∪日 イリーナ

はっ!!ここは誰?私はどこ?
私──イリーナは、上昇する四角い箱の中で我に返った。
ここは、エレベーターの中だわ。どうして私はこんなところにいるの?
確か私は、レノ先輩と一緒にツォンさんを追って、大聖堂に……。
そうよ!そうしたらレノ先輩が、いきなり変な事を言い出したんだ。
自分がアンゲロリーナだなんて………一体、どういうつもりなの?

!!!も、もしかして………
先輩、私のAngelolena書き込みを自分の手柄にして、
ツォンさんの好意を一身に受けるつもりじゃ───!!!

クッ。こうしちゃいられないわ。早く地下に戻って止めなくっちゃ。
「イリーナ……お前だったのか。私のラブ・エンジェル」計画(長い)は
絶対に、絶対に先輩に渡したりなんかしないんだから!!

上昇するエレベーターの中で、とりあえず近い階のボタンを必死に押す。
ちょうど1階にたどり着いたところで、エレベーターの扉が開いた。
「………あれ?」
「ム………」

そこには………。


「ル、ルード先輩っ!!?」
「………イリーナか」
見慣れたいかつい顔とつるつる頭は、まぎれもなくルード先輩だった。
ルード先輩はそれ以上何も言わず、エレベーターへ乗り込んでくる。
そして何かを察知しているかのように、地下へのボタンを押した。

扉が閉まり、エレベーターが下降していく。狭い空間に2人きり。
やたら気まずいわ……。しばらく会っていなかったからかしら?
それとも、ルード先輩が、上半身はスーツを着ているけれど、
下半身は全裸で、むき出しのお尻に電磁ロッドを挟んでいるせい?

分からないけれど、ルード先輩が今の私によい感情を持っていない事は
ぴんと張り詰めた空気で伝わってきた。

そんな気まずい空気のまま、エレベーターは目的地へと辿りつく。
軽やかな音がして扉が開くとともに、ルード先輩が走り出した。
「フォーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
雄たけびのような声を上げながら、レノ先輩へ向かって突進していく。
「相棒フォーーー!!会いたかったフゥゥーーーーーーーー!!(カクカク)」
ルード先輩は、涙ながらに絶叫すると、レノ先輩の肩をガクガクと揺さぶった。

「おおおおお落ち着け相棒!!いいからパンツくらい履けよ、と!!」
レノ先輩の至極まっとうなツッコミが浮いて聞こえるこの空間は何なのかしら?
そんな事を言ってる場合じゃないわ。私も一歩遅れて、ルード先輩に続いて走り出した。

「レノ先輩!!さっきのはどういう事なんですか!!?あの書き込みは私が……」
レノ先輩の右腕を掴んで引っ張り、ルード先輩から無理やり引き剥がす。
ルード先輩が敵意を持った目でこちらを睨みつけ、レノ先輩の左手にしがみついた。
「感動の再会を邪魔するな……イリーナ…………フォーーー!!」
「ルード先輩は黙っててください!!レノ先輩、答えて!!」
2人してレノ先輩の左右の腕にしがみつき、ぐいぐいと力任せに引っ張る。

「だーーーー!!おまえらいい加減にしろ、と!!!ツォンさんが起きちま………」
レノ先輩が言った途端、ブリッジ状態で気絶していたツォンさんがぴくりと動いた。
そのまま、ビデオを逆再生するかのように、ゆっくりとブリッジ状態から起き上がる。
すごいわ………やっぱりツォンさんってかっこよすぎ……ハフン………。
その神々しさに、思わず私も気絶しそうになったが、それところじゃない。

「ツォンさん!!アンゲロリーナっていうのは、わた………」
「お前らぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!」
言いかけた私の言葉を遮って、ツォンさんが大聖堂中に響き渡る声で絶叫した。

「あああアンゲロリーナ様に何をしているんだ!!!!無礼者!!!」
嗚呼、ツバを飛ばしながら激怒するツォンさんも素敵すぎるわ………。
私はレノ先輩の右手に掴まりながら、恍惚とした感覚を覚えていた。
「ルード、イリーナ!!すぐにアンゲロリーナ様から手を離せ!!」
ツォンさんが何かを叫んでいるけど、あまりの素敵っぷりに私の耳には入らない。

「離れろと言っているだろう!!離れないのなら………」
全裸に靴下だけの姿も、上半身だけスーツのルード先輩の何倍も似合ってる。
キャッ、ツォンさんが近付いてきたわ。怒った顔も本当に素敵………。
両方の鼻の穴とホクロから血をだくだく流したまま、ツォンさんが叫んだ。
「………私もくっついてやる!!!!」

言うが早いか、ツォンさんはレノ先輩の腰に勢いよくタックルして、そのまましがみついた。
今のレノ先輩の状況は、右腕に私、左腕にルード先輩、腰にツォンさんを抱えて
ウフフ、さながら保父さんのようだわ。
そんな事を思いながらレノ先輩の顔を覗き込むと、口からエクトプラズム出てた。

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