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⊇月§日 ルード

俺は社長に呼ばれ、社長宅にいる。
社長は愛する俺の相棒レノを探しているらしく、俺に尋ねてきた。

相棒は最近忙しいのか、まったく俺に会ってくれない。だから、相棒の居場所はわからない。

そう社長に全裸で説明すると、社長はすぐに納得してくれた。

 し か し 

俺をなめてはいけませんよ〜俺の相棒レーダーは常に稼動しているんだフォーーーーーーーー!!!
社長なんかに俺の相棒を奪われてちゃたまりませんよ〜!
さぁ〜相棒は今どこに居るか見てみましょう………なっ!!!!…こ、これは…相棒と一緒にイリーナ…!?
セイセイセイセイセイセイセイセイセーーーーーイ!!!!
あの女、俺の愛する相棒となにをする気ですかーーー!?
もう我慢の限界フォーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
社長宅を離れてからと思っていましたが、もう居ても立ってもいられません!!!

「相棒!!今行くぞフォーーーーーーーーーーーー!!!!!」

そう叫びながら社長宅のベランダから俺は飛び立った。全裸で。
相棒は今、ミッドガルの南の方にいる。
まっていろ相棒!
必ずやイリーナと社長の魔の手から救ってみせる!
そして、その後は俺と………フォーーーーーーーーーーーー!!!

⊇月щ日 ルーファウス

真夜中のミッドガルは異様なほどの喧騒に包まれている。
武器を手にした兵士達が慌ただしく往来を駆け巡り、
上空からは幾台もの戦闘ヘリが煌々と地上を照らし付ける。
「…説明は後だ。とにかく、一刻も早くツォンを捜し出せ。
 ………、最悪の場合だと…?駄目だ、生かしたままで捕らえろ。
 そのための手段は問わない」
今ひとつ事情を呑み込めないでいるハイデッカーとの通話を終え、
私は自宅へ向けて車を走らせた。

レノの携帯電話へは通信が取れない。
何度掛けても結果は同じだ。電波が届かないか、もしくは電源が入っていないか、
あるいは、意図的に電源を切っているか…。一向に繋がる気配がない。
私はレノの相棒であるルードに連絡を取ることにした。ルードの応答は早かった。
「きみに聞きたい事がある。これからすぐ私の自宅へ来てくれ」
そう命じ、有無を言わせず通信を切る。
主の帰宅に屋敷入り口の門が開く。
車を降りた私は自宅の中へ駆け込み、真っ直ぐに目的の部屋へと向かった。
──親父の書斎。その忌まわしい部屋の前で足を止め、おもむろに扉を開ける。
瞬時にして放たれる異質なまでの空気、その圧迫感…。
私は眉をひそめ、静かに中へと足を踏み入れた。
部屋中を埋め尽くすクマのモチーフや人形たちが、
神聖なるこの場に侵入してきた異教徒を睨み付けるような目で私を凝視する。
…そんな錯覚にさえ囚われる。

私はデスクチェアに腰掛け、デスクに置かれたままのノート・パソコンを立ち上げた。
先日初めてこの部屋へ入った時に、書棚に収められた書物やファイルの類、
引き出しという引き出しは片っ端から調べ尽くした。
そこから分かったことは、親父が狂信的な『アンゲロリーナ』崇拝者だったという事だけで、
このパソコンからも『アンゲロ』対策となるようなデータは特に見当たらなかった。
しかし、気になるデータが一つだけ存在した。
プロテクトの掛かかったデータベースを解除した中から出てきた、
二重のパスが掛けられたフォルダだ。
一つめのパスは分かった。それは…私の名前、『rufus』だ。
もう一つがどうしても分からず後回しにしておいたが、おそらく、これしかないだろう。
──『falwell』。
その名を入力し、エンターを押す。
すると、短いコード解除音に続いてフォルダが開かれた。
その中には一つのテキストデータが入っていた。

『アンゲロリーナ様の妨げとなる物を以下の場所に封印する。
神羅綜合病院・パスコード "angelo"』

神羅綜合病院…。私の掛かり付けの医師がいる病院だ。
口元から笑みが漏れた。
どうやら、私の予想は的中しそうだ。

⊇月щ日 ルーファウス

自宅でルードの到着を待つ間に、タークスの格闘♀から連絡が入った。
彼女にはしばらくレノの尾行を任せていたが、
イリーナの入院先に通い詰めているといった以外の変わった報告もなく、
先月末で尾行の任務を解除したばかりだった。
だが彼女はツォン脱走の報告を受け、
『アンゲロ』感染の疑いが最も高いイリーナの様子を見に病院へ駆け付けたという。
そして、そこに居るはずのイリーナの姿はなかった。
個室のドアの鍵は掛かっていたが表窓が開いていたらしく、
おそらくそこから脱走したものと考えられる。
担当医の話によれば、就寝時に訪ねたイリーナの様子は別段いつもと変わりなく、
精神的にも安定してきたところにどうして脱走したのか見当もつかないそうだ。
…もしも、本人の意志とは無関係に、何者かによって連れ出されたのだとしたら…。
同じアンゲロリーナ信者によるものか、あるいは…───ツォンか。
そして、誰よりもイリーナの身を案じていた…レノ。
この緊急事態に彼らに何らかの動きがあったとしても不思議ではない。
私は格闘♀にイリーナの捜索を命じると共に、
イリーナが入院中に携帯電話を入手しなかったかを調べるよう言いつけ、話を終えた。

その直後にルードが訪ねて来た。
上司宅に、まさかの全裸で。
思わず怒鳴りつけそうになったのをどうにか堪え、二階の私室へと招き入れた。
これ以上の厄介事はたくさんだ。
レノの居所を単刀直入に尋ねると、最近会っていないので分からないと答えた。
私はそれですんなり納得した。いや、納得してみせた。
居所を訪ねるだけでわざわざ呼びつけたのには、実は思惑があったのだ。
ルードはレノの事となると異常に興奮し出す。信じるのは相棒だけとも断言している。
そのレノが行方知れずともなれば、何かしら行動を示すに違いないと考えたのだ。
ルードはまんまとその思惑にはまってくれた。
何かを察した様子で突然ベランダへ出ると、大声を張り上げながら地上へと飛び降り、
ある方角目掛けて一目散に駆けていった。
私はすかさずハイデッカーに連絡を取り、近隣にいるソルジャーに後を追わせるよう命じた。
運が良ければ、これでレノの居所が掴めるかも知れない。

その後、私は自宅を出ると神羅綜合病院へと向かった。

⊇月щ日 通行人F

いやな外気だ。何か大きな力がどこかで動いている気がする。
俺は心が落ち着かなかったんだ。どこかで何かが起きているのに、
自分には何も起きない。それがイヤで表へ出たんだ。

でも結局、道を歩いているだけでは何も起きない。あきらめて脚を自宅へと向けた。
・・・そのときだった。遠くで声がした。なんだ・・・?
何かが起こることを望んでいたはずなのに、自分は足を速めた。
・・・声が近づいてくる。それもすごいスピードで。恐怖が顔頃の中で芽生え始めた。
まさか・・・人間じゃないのか?

「フォーーーーーーーーッ!!!」
はっきりと聞こえる。まだ見ぬモノの雄たけびが。
明らかにこちらへ向かってくる。もう50メートルもないほどの近さだ。
俺は走り出していた。安らぎを与えてくれる我が家へ。
「うわああぁあっぁぁぁ!」
恐怖に包まれていた。自分の悲鳴さえ聞こえないほどに。
もうだめだと心があきらめた瞬間、それは視界に入った。
俺を追い抜き、さらにスピードを上げて去っていく。雄たけびを上げながら。
それは人の姿をしていた。だが人ならざるもののように感じた。
服を身に付けていなかった。
首からネクタイをたなびかせ、脚には靴下、そして後ろからなので
定かではないが眼鏡かサングラスのようなものをかけて、尻には棒のような物が挟まっていた。
「お・・俺は、助かった・・・?」
その瞬間、体中の力が抜けていく。その場にへたり込んでしまった。
もう、非日常を求めるのはやめよう。あのスキンヘッドに会わないように。

○月×日通行人

あの変なスキンヘットの男がこちらに向かっている。
恐怖でそこにあった棒で叩いたら気絶した。
急いで逃げた

×月○日掃除のおばはん。

ツォンの部屋を掃除しようとしたら徹子の部屋になってた。

〆月ゞ日 ツォン

感じる。
これは確かな感覚だ。
一心不乱に走り続け疲労困憊し、頭も少しボーっとしている。
だがこれは間違いなく……アンゲロリーナ様の気配だ。
私は確かに感じるそれに惹きつけられるようにまた一心不乱に走り出す。
それは心なしか地面の下から伝わって来る。
マンホールを開け、梯子をしっかりと掴み、降りて行く。
コンクリートに足を付け、ふと見た足元は白かった靴下は汚れで汚らしい色になり、至る所に穴が開いている。
こんな格好ではアンゲロリーナ様に示しが付かない…。
だが、気にしている場合では無い。
私はまた走り始める。
時折下水に足を掬われ転ぶ事もあった。
この時の私はかなりの疲労を抱え込んでいたにもか関わらず、不思議な程に足が動いた。
そして目の前に広がった───真っ白な空間。

私はついに、夢にまでどころか幻覚にさえ見た大聖堂に到着したのだ。
視界が涙でぼやけた時、私は意識を失った。

〆月□日 ルーファウス

タークスからツォンが発見されたと情報が入った。
話しによると、アンゲロ大聖堂に設置しておいた監視カメラにツォンが映り、急いで駆け付けると恍惚とした表情で倒れていたらしい。
直ちに拘束し、以前軟禁していた部屋よりもセキュリティの厳しい部屋へと閉じ込めた。
ツォンは時折「フヒヒヒヒ!」と白目を剥きながら笑い、きもいし不気味極まりない。
意識が戻り次第尋問をし、全てを問い質す。
だがツォンが捕まったからと油断をしてはいけない。
宝条の探知機があるとはいえ、アンゲロ信者の数は未知数だ。
これまで以上に徹底して調査を進めねばならない。

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