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◎月√日 イリーナ

今日も自分の身体から紐が出て引っかかっているかのような感覚に囚われて
ジャングルから抜け出せない。
もう私は心も体もタークスの意地と心意気を忘れてしまったのかしら……と落ち込んでいたら

「あ〜〜〜!!!!!!!!! 手がすべったぁぁぁぁ〜〜!!!!!!!!!」

という大絶叫と共に巨大な手裏剣が目の前に飛んできた。
私はとっさに身をかがめて寸でのとこでその手裏剣を避けた。
すると私の後ろで「シュパッッ」と何か紐のようなものが切れる音がしたと思ったら
その手裏剣はターンして飛んできた方向へ戻っていき、私の前方5メートルの木に刺さった。
誰かが私に奇襲をかけてきたらしい。なんて卑怯なの!
急いで立ち上がり、次の攻撃に備え身を構えていると
前の茂みからまだどうみてもまだ高校生くらいの忍者娘が出てきた。

「あっれー? アタシの手裏剣どこいったの……て、アンタ誰?」

どうやらこの小娘が手裏剣を投げてきたらしい。
奇襲してきたくせに白々しい嘘をついて…ムカついた。
しかも私より貧乳のくせに露出度の高い服着やがって……さらにムカついた。
こうなったら、ただじゃ済まさない!

「奇襲を仕掛けてくるとはなんて卑怯な!
 我が名はアンゲロリーナ様の加護を受けたタークスの女神、ラブ・エンジェル!!!!!!!!!!!
 倒せるものなら倒してみなさい!!!!!!!! アンゲロォォォォぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」

と忍者娘に叫んだら、私の気迫に押されたのか忍者娘は何かものすごい言葉では
言い表せないような表情を浮かべて逃げていった。

忍者娘との戦闘を終え、気がつくと、とても身体が軽くなった気がする。
久々に戦闘に身を置いたから、タークスの意地と心意気が戻ってきたのかしら。
今なら間違いなくジャングルを抜けられる。
そしてあのエロ野郎……いえレノ先輩をツォンさんの家から引きずりだしてやるんだから!
フヒッ!! フヒヒヒヒ!!!!!




と、その前に成功を祈願してアンゲロリーナ様に2時間ほどお祈りしてから行こう。

∴月◇日 ルーファウス

私は今、深刻な問題に頭を悩ませている。
長年信頼してきた部下が、なぜ…。

宝条を社の自室へ呼び出し、例のビタミン剤について厳しく事情を問い詰めた。
事と次第によっては解雇処分も辞さないつもりでいたが、宝条の言い分によると、
ツォンに弱みを握られ、無理矢理に作らされたものだという。
正直、私はその話を疑った。
宝条よりもツォンの方が信頼できる、それだけの理由からだ。
だが、その薬物による作用を聞き、私はひどくおぞましい感覚に捕らわれた。
『アンゲロリーナ』。
その未知なる存在で思考回路が充満され、幻覚状態や譫妄・錯乱状態を起こし、
ただひたすらに『アンゲロリーナ』を崇拝せずにはいられなくなる。
…先日の秘書の豹変ぶりが脳裏に過ぎった。
彼女は恍惚として叫んでいた。…「アンゲロ」と。
ここ最近のツォンの妙な様子からも、宝条の話を裏付けるに十分ではないか。

そして、確信的な物証が入った。
ツォンによるリーブへの依託物からそれは発覚した。

退室させた宝条と入れ違いざまに訪ねてきたリーブが、
深刻な面持ちで一枚のカードを私に差し出した。
『クマエル賛歌』と題された歌の歌詞カードだ。作詞・作曲はレノとある。
どうやら、ツォンが社歌にしたいと言っていた異様な呪文の元らしい。
目を通し、『アンゲロリーナ』の文字に虫酸が走る。
…レノも洗脳されているということか。
それにしても、レノにしては随分メルヘンな詩を書く。思わず笑みが漏れる。

「社歌にしたいと言うのだろう?先日ツォンから直に言われて断ったばかりだ」

そう言い、リーブに歌詞カードを返そうとすると、「もっと良く見て下さい」と言われた。
一度読めば把握できる内容だ。おかしな事を言う奴だと思いながら、再度目を通す。
この時点で、私はまだこの詩に隠されたレノからのメッセージに気付かずにいた。
声を潜めるようにしてリーブは告げた。

「縦読みです」

…そして私は気付いてしまった。

背筋が凍りついた。

レノどころか、イリーナやルードの姿も見かけない。連絡も付かない。
ツォン。
目的は何だ?
『アンゲロリーナ』なるものを神格化し、
薬物による洗脳を行ってまで広く信仰を広めたいだけなのか、
…それとも…。

後日、ソルジャーによる特殊部隊を組み、ツォン自宅の家宅捜査に乗り出すことにする。

∴月◇日 ルード

ようやくイリーナがジャングルから出て行った。
ゴリラと仲良くしていたので、締め上げる機会がなかったが、
どうやら目的地ははっきりしているようなので、コッソリ後をつけることにした。全裸で。

セイセイセーーイ!!!待ってろよ、相棒!もうすぐ助けてやるならな!!フォーーーーー!!!

∴月£日 ツォン

最近、BCというゲームで私の過去が語られたそうではないか。
フヒ、フヒヒヒヒヒ!
その雄姿たるや正に
蝶のように舞い蜂のように刺す!
という形容がぴったりだ。
なに、私のミスでヴェルド主任に怒られていただと?
あれは私のミスでは断じてない。
全ては捕まった兵士のせいだ。
あの兵士は「助けてくれよぅ(涙)」とうるさい奴だった。
あまりにうるさいので、私は仕方なく救出を優先したのだ。
BCでは後で皆が感動できる話にするために私をおとしめて捏造したにすぎないのだ。
実際の事実を語ったら、皆は感動する暇もなく私の虜になってしまうからな☆

実際の事実はこうだ。

颯爽と敵地を駆け抜け、見張りのクルーを華麗に仕留め、
見慣れぬコンピューターを自在に操り兵士を救出した私。
・・・我ながら惚れぼれしまうからな♪
しかし兵士が「助けてくれよぅ(涙)」しか言わなかったせいで
兵器を横流しされた情報を掴むのが遅れてしまった。
そこで私はヴェルド主任を従え、再び颯爽と敵地へ赴いたのだ。
ここで大事なのが、私がヴェルド主任を従えたということだ。
なにしろ、先頭を任されたのだからな(フッ
ヴェルド主任と別れた後も、私は持ち前の戦闘技術、頭脳、アンゲロを駆使して
見事、神羅兵器の情報消去を成功させた。
もちろんバックアップもその場で破壊した。
敵に奪われた話は、皆が遊べるように用意された捏造話だ。

その後、再びコンピューターを操りヴェルド主任の様子を見ると
なんと兵器に囲まれているではないか。
全く役に立たない上司だ(ハァ
私は仕方なく助けてに行ってやった。
私が着くなりヴェルド主任は
「助けてくれよぅ(涙)」と兵士と同じことを言いだした。
だから、仕方なく助けてやった。
アンゲロ的に華麗な戦闘技術で兵器は一瞬のうちに全滅。
しかし馬鹿な敵が船(敵地)の自爆スイッチを起動させたため急いで脱出することに。
BCでは私が瓦礫の下敷きになり、それを助けようとしたヴェルド主任が怪我を負うことになっている。
が、実際はヴェルド主任が勝手に転び、下敷きになり、私が助けてやったのだ。
全く、上司のくせに部下に迷惑かけまくりんぐとは・・・(ハァ
そして、私達はアンゲロリーナ様のご加護
もとい私の活躍によって敵地から脱出、任務を成功させたのだった。

どうだ、BCがどれだけ捏造されたものか分かってもらえたかな?
なに、私が格好良すぎてBCの方を忘れてしまっただと?
フッ、それでいい。
君は真実を脳裏に焼き付けたのだから☆

∴月£日 イリーナ

とうとうツォンさんの家に辿り着いた。
ちょうどツォンさんは留守で、レノ先輩が一人クマエルちゃんを抱いて何か歌を口ずさんでいた。
始めて聴いた歌だったけど、どうやらクマエルちゃんの歌らしい。
レノ先輩もアンゲロリーナ様の信徒になったのかしら。
レノ先輩が今まで、ここでツォンさん直々に教えを説いてもらい、
さらに私が知らない歌までも教えてもらったのかと思うと腹が立ってきて、
私は思わず釘バットを振りかぶった。

すると突然、ルード先輩が

「セイセイセイセイ!!俺の相棒に何やってるんですか〜。この腰でぶっ飛ばしてやりますよ〜!」

と言いながら跳びこんできた。全裸で。
私が思わず目を覆うと、その隙に殴りかかってきたのでとっさにかわした。
パンチは私の真後ろにいたレノ先輩の右頬に思いっきりヒットした。
ついでにレノ先輩に一発だけ釘バットを喰らわせたが、さすがにルード先輩には敵わないと思ったので、逃げる事にした。

しかし、一歩外に出たところでちょうどツォンさんが帰って来てしまい、
勝手に家の中で暴れていた私達をみて。

「お前たちもいたのか。よし!みんなでクリスマスアンゲロパーティーだ!フヒヒヒ!」

と言ってツォンさんは、さっき買ってきたらしいパーティーセットを取り出した。
ツォンさんは怒ってないみたいなので安心していると、向こうの方から人の大群がやってきた。
しかもみんな神羅のソルジャーで、社長までいる。
ただならぬ雰囲気で、殺気にみちている。
ずっと無断欠勤してたからかしら・・・。でも私がここにいることがそんなに早く分かる訳もないし・・・。
まさかツォンさんが?
いったいどうなってしまうのかしら・・・。

∴月£日  ルーファウス

今日の衝撃的な出来事はどう書いていいのやら……とりあえず順を追って記す事にしよう。

今日はまずツォンが出社している間を狙い、自宅の家宅捜査に乗り出したのだが、
ツォンの自宅にはあの『アンゲロリーナ』なるものと関係していると思われるものが何も見つからなく、残念ながら収穫はなかった。
だが、ツォンの自宅には市販の人形を改造して作ったと思われるタークスメンバーと古代種を模した人形と、天井を埋め尽くすように吊り下げられた数々のドライフラワーがあったという……。
部下の趣味についてとやかく言うつもりはないが、その報告を聞いた時背筋が凍った。
この趣味は置いておいて、まさかツォンはシロだというのか……!?
しかし、レノを始めとするタークスメンバーが行方不明ということは、他に拠点がある可能性を否定できないので退社後のツォンを尾行し、他の拠点をつきとめる事にした。
ツォンの退社後しばらくすると、他の拠点をつきとめたらしく、尾行させている者から特殊部隊出動要請が入った。
早速私は50人の1stソルジャーとリーブを連れ現場に向かった。

現場は外観はごく普通のマンションに見えた……だが部屋の中は異世界だった。
ところ狭しと並ぶ羽根の生えたクマのぬいぐるみ、しかもご丁寧に1体1体違う仕様になっている。
そしてそのクマがプリントされたピンクのカーテン、ソファー、ベットカバー……部屋全体がこのクマで覆い尽くされている……!
……超キモい。ボキャブラリーが無いようだが、その一言が的確だ。いやその一言でしか言い表せない。
そしてこのすさまじい光景の中に捜していたタークス全員が揃っていた。
例のクマのぬいぐるみを抱いたまま放心しているレノ。
制服ではなく何故か野性的なコスプレをして釘バットを持つイリーナ。
そして………………………………何故か全裸のルード。
……異常だ、誰が見てもこれは異常だ。これがあのエリート社員集団タークスなのだろうか。
そんな状態の部下を目の前にしているのに主任のツォンときたら、
「メリーアンゲロス!!!!!!!!! 社長も一緒にクリスマスアンゲロパーティしませんか? フヒヒヒヒ!!!!!」
などと一人ハイテンションでぬかしている。
……この男が一番異常だ。間違いない、全ての元凶はこの男だ。
「……ツォン、この間の栄養剤の事で聞きたい事がある、会社まで同行願おうか。それから無断欠勤した他タークスメンバーは指示があるまで謹慎処分とする、いいな?」
そう伝えると、ツォンはしばらく固まったままだったが、
「はい、わかりました」
と抵抗もせず笑顔で答えた。

左右をソルジャーで固め、ツォンを連行しようとしたら、
「待って下さい! 最後に少しツォンさんと話させて下さい、と」
と、さっきまで放心状態だったレノがツォンに近寄った。
「ツォンさん、俺はツォンさんを信じています。これはクリスマスプレゼントにしようかと思ってたんですが…
 ツォンさんが戻ってこれるようにお守りです、と」
そういうとレノは懐から例のクマが手描きされている絆創膏を取り出し、ツォンの額…というかホクロの上に貼った。
「これは俺の手作りです、と。戻ってこれるまで剥がさないで下さい、と」
そんなレノの行動に感激したらしく、
「ありがとうレノ、私の為にクマエル絆創膏を……。心配するな私はきっと戻ってくる。
 アンゲロリーナ様の加護があるのだから……社長もきっと話せば分かってくれる」
と涙ながらにレノに感謝の言葉を伝えている。間に合わなかったか…レノも洗脳されてしまった……。
私が作戦の遅れを悔やんでいると、洗脳されていたと思っていたレノがすれ違いざまにそっと耳打ちをした…。

「……あの絆創膏は絶対に剥がさないで下さい、と」

あの絆創膏には何の意味があるというのだろうか?
絆創膏を剥がした時どんな出来事が待ち受けているというのか……?
そしてツォンが狂信的に信仰する『アンゲロリーナ』とは……。

∴月f日 短銃(♀)

最近なんか妹がおかしい。
いや本当におかしい、なんかアンゲロアンゲロとかラブエンジェルとか訳のわからないことをつぶやいてるのを聞いたし。

ツォンさんもおかしい。
っていうかツォンさんが一番おかしい。
タークス本部にでかい仏壇置きだして『皆アンゲロリーナ様へ毎日3回祈りたまえ』とか、本当におかしい。

ひょっとして宝条博士が勝手にタークスメンバーをレイヴンに改造してるのだろうか・・・。

∴月m日 短銃(♀)

昨日社長に呼ばれた。
用件はツォンさんおよびアンゲロリーナ信奉者の拘束指令、私は喜んでOK。
だってあの人が最近社内で奇行に走っているのは見てて痛いし。
社長はさらに続けた。
「今信用できるのはタークスのみだ。タークスでアンゲロに感染していない人間でチームを組んで
 対応したまえ。これは神羅はおろかミッドガル全市民にも影響のおよぶ・・・アンゲロクライシスだ。」

Final Fantagy Z  Angello Crisis

゛月_日 短銃(♀)

Angello Crisisが始まりしばらく経った頃、
神羅の情報部からある情報が送られた。

「ツォンはA(アンゲロ)−ウィルスなるものを使い、
 市民をアンゲロ化しようとしている」

この流れ、どっかのホラーゲームであった気がするけど・・・。
そう思いつつもツォンさんの自宅へ向かう私達(社長+ソルジャー)。
そしてツォンさんの自宅の扉の前に到着した頃、
また情報部から情報が送られて来た。

「先程お送りした情報はホラーゲーム好きのB氏が悪戯で
 書いたものを誤って送信したものです。お騒がせしました。」

ツォンさんだけじゃなく神羅内部も危ない気がして来た。

>>∴月£日  ルーファウス に続く)

Й月〆日 ツォン

社内に監禁されてそろそろ※日ぐらいだろうか…。
たまに社長とリーブ部長に尋問されるぐらいで、暇でしかたがない。
こういう時にはホクロビームを打ちながらアンゲロしたいのだが、
そうしたら、レノが私の為にせっかく作ってくれたクマエルちゃん絆創膏を破壊してしまう!
私にはクマエルちゃんを焼き殺すなど……出来ない……!
しかもレノが私の帰還を信じて貼ってくれたお守りを剥がす訳にはいかない!
でも、ホクロビームしたい!
ホクロビームアンゲロしたい!
したい! したい! したい! したい! したい! したい!
したい! したい! したい! したい! したい! したいぃぃぃぃいぃぃぃぃィィィ〜〜〜〜〜!!!!!!!!
こんなにも体内にホクロリーナエネルギーがチャージされているのに打てないなんて!ハァハァ!!!!!!!!!!!!!
これは拷問に等しい!…………でもこれを耐える気分もちょっと良い……かも。
クマエルよ…可愛さあまって憎さ百倍とはこんなことなのか……。
こんなやきもきした気分は久しぶりだ。

そういえば昔、エアリスが「明日もこの場所でお花売りするね」って言うから、
寒風吹きすさぶミッドガルの繁華街でなかなか来ないエアリスをやきもきしながら待ったっけ




………15時間。

結局エアリスは来なくて、私は風邪をこじらせ肺炎になって10日間寝込んだな……。


……今日は泣いてみるのもいいかもしれない。

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