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○月剴 ツォン

先程、重役会議が終わった後
いきなり社長が「皆がきちんとメモをとっているか
一応確認したいので、後ろから書類を集めて来い」
と言い出した。
私の書類の余白はすべてアンゲロリーナ様への愛のポエムで埋まっており、
あまりの急な出来事で消す暇もなかった。

ああアあああぁ社長うぉぉををwlをっわアンゲロぉぉ社長あたあああぁぁぁぁ嗚呼!!


まあいいか。

○月剴  レノ

今日はツォンさんとイリーナにせっつかれて、一日始末書を書くハメになった。面倒だぞ、と。
途中で飽きたので、体動かしにジムに行くとルードがトレーニングしていた





全裸で。

ルードが気まずそうな顔して下を向いたので、俺は見なかったことにして急いでエレベーターに乗った。

○月・日  ルード

昨日はレノとタッグのミッションの予定だったのだが、
他のターゲットと重なったために主任とイリーナも加わってしまった。
おまけに途中からレノとは別行動になり、レノの方はドジをふんだイリーナの
サポートをしているうちに自分もミスをおかしてしまって散々だったらしい。
久しぶりにベテラン同士の連携を楽しめるはずだったのに。
そのせいでイライラしていたためか、今日はどうにも落ち着かなかったので
休日出勤してジムでトレーニングに励んでいた。

すると途中でイリーナが隣の無人のリフレッシュルームにくるくる踊りながら入ってきて
「わ・た・し・は・ラブラブラブ〜ラブエンジェル〜。ルルラララ〜」
などと訳の分からない歌を歌いながら自販機でコーヒーを買っていた。
「ルルル今日もオフ会目指して〜踏むのよ夢のアクセス〜ララ……ラ?」
ガラス越しに目が合った。
しばらくそのまま気まずそうにしていたイリーナは、そのうち会釈して逃げた。
休日なのに会社に来ている所をみると、おおかた始末書を書かされているのだろう。
それにしても昨日ドジを踏んでおいて呑気な奴だ。
いや、呑気で済めばいいが、先輩に迷惑をかけてケロリとしているとは。
しかもレノにである。なんだかムズムズしてきた。
仁王立ちのままいきり立っていると、いきなりパンツが破れてしまった。

まずい。
と思ったが、落ち着いてみればどうせ誰もきやしない。
イリーナだってさっきの今では来ないだろう。そのままトレーニングを続ける事にした。
全裸でのトレーニングは案外悪くなかった。
あんまり調子がいいので重量あげの自己記録に挑戦する事にした。
バーを掴み、腰を入れて、一気に起き上がる。
いける、いける、いった!完全に持ち上がったときに、缶がころがる音がした。
リフレッシュルームにレノがいた。

バーベルを持ち上げたままうつむく。終わった、と思った。
が、そういえばいったいなぜ休日なのにレノがここに?
まさかレノもオレ同様、イライラが募っていたのでは?
あるいはオレがここにいると思ってやってきたんじゃないか?流石は長年のパートナーだ。
そう思いあたって、オレは大きくガッツポーズをして呼びかけた。

「レノ!!ご一緒にーーッ!!」


だれもいなかった。
○月剴ルーファウス

今日は定例の重役会議を開いた。

その会議の後、皆がちゃんと会議に参加していたのかふと気になり、皆の書類を集めた。
その集める役目をツォンに指示したところ、一瞬戸惑った顔をした後、笑みを浮かべているのか分からないが奇妙な顔になった。正直寒気がした、キモい。

その時はまだ仕事が残っていたので、リーブの書類にだけ目を通した。さすがリーブだ、真面目に話を聞き、メモを取っているようだ。
しかし、ところどころアンゲ・・・などと意味不明な書き込みを消した後がある。
まぁそんなことは気にしない、奴もなにか考えることがあるのだろう。

さて、残りはあとで見ることにする。不謹慎ではあるが、なんとなく楽しみだ。まぁ、ある程度の予想はついている。
リーブ以外に真面目に取り組みそうなのはツォンくらいだ。あとは予想通りだと思う。
まったく関係はないが、風邪をひいたかもしれない。会議の後からというもの何やら悪寒がしてならない。空調の温度を上げるよう言っておくことにする。

○月剴  レノ

ジムから逃げるようにオフィス帰ったらイリーナがいなかった。
給湯室で音がしてたので、驚かそうかとこっそり行ってみたら、
マツケンサンバ歌いながら激しくステップ踏んでた(上手)。
コーヒーあおりながら。
その後、スーパーの袋から焼き鳥出して立ったまま食べ、
「う、う、うーまーいー!」と叫んで、またマツケンサンバ。
「キュッキュッ!」とか「アンゲロぉーーーっ!」とか意味不明な合いの手を入れながら。
出ていけなくてしばらくそのまま見てた。
「帰ってるぞ、と」と出てった時の泣き笑いみたいな顔、初めて見る顔だった

○月С日  ツォン

 こんな日は、昔の事を思い出す。

 数年前、まだタークス主任で無かった頃の話だ。神羅のターゲットである、
ある女の子がいた。名前はエアリス。エアリスは線が細く童顔で
とても可愛い、ロリコンでも幼女と間違ってズタズタにスカートめくりしまいそうな
そんな萌え萌えな美少女だった。まだ慣れてない花売りをニコニコしながらする姿は
とても可愛かった。男どもには絶大な人気を得ていた。私はこのエアリスが好きに
なった。これは初恋だったと思う。
 私は任務の時間が待ち遠しかった。楽しみだった。好きなエアリスに会えるから。

 ある日のこと。任務が始まって私がミッドガルのスラムに行くと、
エアリスが花を売っていた。エアリスを見ると常にアンゲロしてしまう私はアンゲロした。
 エアリスはまたニコニコしながら花売りを始めた。何故かチラチラ私を見ながら
通行人に「お花、買わない?」といっていた。目が合うとドキッとした。
 1ギルの花を500ギルで男に売りつけているエアリスを見ていたら、エアリスは突然
私の横に来てそっと座った。いいいいい一体どうしたのだ!!!!!???
激しく動揺しているとエアリスは花売り中のニコニコしている様子の何十倍も
非常にやさしい声で話し掛けた。何故だ。今まで話し掛けてこなかったのに。

「あなた・・・ツォン?花、好きなの?」
「えっ、は、ははははははははは花はすきです(お前が好きなんだよ馬鹿野郎)」
「くすっ。緊張しなくていいよ。もっと柔らかく、ね」
 まるで私を誘惑するような言い方だった。これから私は通行人の前で
エアリスに犯されるのではないか?などと有り得ない妄想をしてますます動揺する。

「ねぇ、わたしの育てた花、きれい?」
「ソダテタハナ、キレイ!」
「あははっ。ありがとう」
「ありがと!」
 もはや会話になっていない。エアリスはオウムと話しているような感じだっただろう。

「あのね、ずっと前の頃のツォン、見たことあるよ」
「べ!」
「スラム街でひとりでローラースケートしながらお祈りしてたよね。アンゲロ?・・・って。
あの時ツォン、可愛かったから、ずっとツォンのこと覚えてたよ」

「な、な、ななんで私を見てたんだ??」
「わたし伍番街に住んでるから、ね。こっちの方に用があってきたときに、見かけたの」
 次々と衝撃的なことばかり言ってくれるので、最早気が気でなかった。事実、気が
触れかけていた。

「エアリスもポーランサリタよりカワイイです」
「くすっ、ありがとう」
「私は男なのに、なんで可愛いんだ?」
「母性本能をくすぐられるっていうか、ね。なんか可愛いの」

 エアリスは笑いながら微かに頬を赤くした。周りの通行人どもは呆然としたまま私たちを
見ていた。その後眩暈がしながら花売りするエアリスを見てた。通行人に「動揺してたね」
と言われ、まだ動揺してたので「動揺してたね」とオウム返しした。するとエアリスはまた
心に激震が走るようなことを言った。「今日でここでの花売りは終わりです(場所変えるだけ)」卒倒しそうだった。

 任務後、その日だけ仲間達とは帰らず、一人でとぼとぼと歩いてオフィスまで帰った。
(エアリス捕獲の任務は忘れていた)
自転車で来たのに、自転車で来たことを忘れていた。失恋のショックは大きかった。元気ないまま、帰社すると
見知らぬ気配があった。あれ、誰だろう?と思いながらオフィスに帰るとなんとオフィスにエアリスがいた。

 「うひ! うひ! うひ!」あまりの喜びに爆笑した。「あっ、ツォン!」とエアリスは
元気いっぱいに話し掛けてきた。「うひひひひひひひひひ! エアリスがいる!どうしたんだ!」

かつてない笑いを零した私をさっきまでエアリスと話していたレノは信じられないという表情で見ていた。
だが今はレノなんかに構ってられない。エアリスとの貴重な会話なのだ。
「お菓子くれるっていうから、一口食べたくて来たんだよ。貧乏だからね、私」
「あっ、ど、どどどうもだ」
「これあげるね」

 エアリスはとても奇妙な指輪をくれた。
まがまがしいドクロのデザインでどこか不吉な匂いを伺わせる、
恐ろしい指輪だったがエアリスがくれたということでとても可愛らしいものと思うように努めた。

「ちょちょちょちょちょっと待っててくれ」
 私はロッカーに向かい、小学生以来鍵をかけて厳重に保管していた
モズのはやにえを取り出し、エアリスにプレゼントした。

「はい、魔法のモズのはやにえ」
「えっ、魔法?」
「空から降ってきたんだ。このモズのはやにえ」
 今考えると木から落ちてきただけのモズのはやにえである。背が小さくて馬鹿だったから空から
降ってきたと思い込んでいたのだ。そしてタークスになっても馬鹿は変わりなかったから、信じ続けた。
「そうなの! ありがとう」
「モモモモモモモモモモズのはやにえです」
 そのとき、急に感動のふたりの時をレノは邪魔し出した。なんだ、大切な時にこいつは。
「ツォンさん、腐ったモズのはやにえ古代種にあげてどうするんだ、と」
「だだだだだってこれ大切にしてたから」
「ううん、わたし、嬉しいから、いいの」
 エアリスは心底嬉しそうな顔をしながらモズのはやにえを指先でつまんでいた。

「ほんとね、この人古代種(エアリスのこと)のこと毎晩言ってるんだぞ、と」
「えっ、そうなの?」
「うん、もうねよほどアンタのこと好きらしいぞ、と。花を10000ギルで買ってアンタになでなで
してもらうのが夢とか、ねぇほんと。あはははは!馬鹿じゃないか、ツォンさん!」
 レノはオフィスでエアリスの噂をしていたことを暴露し出した。私は恥ずかしくて死にそうだった。

「へー。じゃあなでなでしてあげよう」
 なでなで、と赤ん坊をあやすように言いながら玄関でホクロをなでてくれた。アンゲロしつつ狂喜した。
「うひひひひひひひひひひひひひひ」

「うわ・・・、と。変態じゃないかこの人」
「そんなことないよ。可愛いよ、ねー」
「だでだでぼっどじでーーー(なでなでもっとしてー)」
 理性は吹き飛んでいた。


 …思い返すと死にたくなる。

○月・日  イリーナ

「レノ先輩、サボっちゃ駄目ですからね!」
「うるさいぞ、と。なんでお前のミスで俺だけ負い目浴びなきゃなんないんだ、と」
「べ、別にあれ私のせいじゃないですよ!
 先輩がショーウィンドウのクマのぬいぐるみにいきなり飛びついたから……」
「大体なんでお前ここに来てんだ、と。さてはレノさんのことが心配で……」
私は無視してオフィスを出た。
先輩なんかどうでもいいけど、わざわざ休日出勤した目的を思い出したから。
今日は週に一度のアンゲロリーナ様のお清めの日(らしい)。
この日は神羅本社の全ての部屋でアンゲロの祈りを捧げて社を清めるのだけど、
ところがそれをやっていたツォンさんが、急遽日程が変更した定例会議に出席のため
信頼できる私にこの大役を任せてくださったというわけ。
ツォンさんはいつもお一人でこんな事をこなしているのかと思うと、沸々と使命感が沸いてきた。
使命感と一緒になにか喪失感も大きかったが、途中でその喪失感自体を喪失した。
「祈り方はなんでもいい。要は心にアンゲロ様を抱く事だ。アンゲロ」
というお言葉で、はじめは私も戸惑いげにアンゲロ様、アンゲロ様、と
馬鹿丁寧に祈っていたんだけど、だんだん慣れてくると変わってきた。
というか、ぶっちゃけノッてきた。
後半はラブエンジェル一色ですっかりアンゲロ様の事を忘れてきてしまっていた。
今思えばそれがよくなかったのだと思う。
あらかた回り終えてリフレッシュルームで踊っているとルード先輩に見られたのだ。

ショックだった……唯一マトモなルード先輩に…(他が変というわけじゃないけど)
私はいたたまれなくなって逃げた。
お昼を買いにスーパーに寄ってからオフィスに戻る、と出ていこうとするレノ先輩とすれ違った。
「あ、先輩終わったんですか?」
「………トイレだぞ、と」

……トイレ、オフィスの奥にあるのに。見え透いたいいわけだ。
でも好都合だった。オフィスのお清めが残ってたからだ。
「タークスの事務室ではこれを使って清めろ」
と言われていたのでツォンさんのデスクのテープを再生した。……マツケンサンバ。
流石にここまで仕事をこなした私もちょっと抵抗があったので、
外から見えないように給湯室で踊った。それで安心したせいか、予想外にノリまくった。
焼き鳥も食いまくった。
コーヒーも飲みまくった。
気付いたらやっぱりレノ先輩が見てた。

予想できてた事なのに、なんかこみ上げてくるものがあって変な顔で笑っていると、
レノ先輩は淋しそうな顔でオフィスから出ていった。


ふいに気軽に先輩とどつきあってたあの小さな部屋に戻りたいと思った。

○月剴 イリーナ

今日は、昨日の任務失敗の始末書を書くために休日出勤させられた。
休日出勤は嫌だけど、ツォンさんも重役会議があって出勤するらしいので、
ひょっとしたら二人っきりになれるチャ〜ンス!?…と思っていたらレノ先輩もついてきた。チッ
しばらくして、始末書もひとしきり書き終わったので、
まだ半分も終わってないレノ先輩を尻目にコーヒーを買いに行った。
…誰もいない会社には魔力がある。なんだかテンションが上がってきて、
気がつけば目下作詩作曲中の「ラブ・ラブ・ラブエンジェル」を大声で歌っていた。
もうノリにノッて、リフレッシュルームの自販機で、華麗なターンでコーヒーを受け取る。
……ん?なんだかいつも見慣れた黒いものが見えたような…
………ルード先輩だった。
見られた。ノリノリで変な歌うたってるとこ見られた。うああぁぁぁあWあアアぁアンゲロあぁあ嗚呼…
しばらく沈黙が続いたあと、態度だけは冷静にと軽く会釈して部屋を出た。

オフィスに戻るとさっきまでいたレノ先輩はどっかに行っていて、ツォンさんだけがいた。
きっと私は顔を真っ赤にしていたのだろう。ツォンさんは少し心配そうな顔をして
「なにかあったのか?」と聞くと、ありがたいアンゲロリーナ様のお話をしてくれた。
そして話が終わると、「さっき外で焼鳥買ってきたから、これでも食べて元気出せ」
と言い残し、会議の時間だからと部屋を出ていった。
そうよ!よく考えたら見られたのがレノ先輩やツォンさんじゃなくて良かったじゃない!
…ああ……それにしてもツォンさん…。やっぱり素敵だわぁ…。
今日の出来事を忘れないように今すぐ日記につけよう。
そして、つけ終えたら給湯室でツォンさんのお土産のをありがたく頂こう。
今日はなんて良い日なのだろう。アンゲロリーナ様万歳!!!アンゲロ、アンゲロ!

 ○月C日 ルーファウス

先程から、くしゃみが止まらない。
先日の定例会議で悪寒がしていたが、風邪でもひいたのかもしれない。
あ、また出そう

  「ハ、ハ…ハッ……ぁァァあんげろっ!!!」

ん?廊下ですれ違ったイリーナが変態でも見るような目つきでチラチラと私を
伺っている。
失礼な。とりあえず、タークスは全員減給だ。

 ○月C日 リーブ

最近、風邪(…だと思う。おかしなクシャミや咳が出るのは、多分気のせいだ)
をひいて寝込んだのだが、 うちのぬこが看病してくれた。

家で一人寝ていたらぬこが枕元にインセクトキマラ(死亡)を持ってきてくれた。
非常にグロくて気が遠くなったが、気持ち悪がるとぬこを傷つけてしまうんじゃないかと思った私は、
「ケット・シー(ぬこの名前)、ありがとう。私、凄く嬉しいよ…」と引きつった笑顔で答えた。
ぬこは満足げな顔をしてた。
そしてぬこが目を話した隙に、トイレの窓からインセクトキマラのご遺体を遺棄し、
「ケット・シー、さっきの便所コオロギ(インセクトキマラの方言)すっごく美味しかったで!」と報告すると、
得意げな顔で「アンゲロォォォ」と鳴いた。
その後、私は寝入ってしまったのだが、
ふと目を覚ますと今度は枕元に、ぬこのお気に入りのデブモーグリと、
庭のフェンスに自生しているオチュー(完熟&歯型・ゴミ・砂利・虫付き)が置いてあった。
虫は勘弁してくれ、と思いつつもぬこにみつからないようオチューはそっと処分した。

咳が止まらないが、とても幸せな気分アンゲロよ。

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